2025/06/12投稿者:スタッフ

精神‧発達障がい者採⽤、 「体調の安定性」を最重視、約6割の企業が回答

<調査サマリー>

  1. 障がい者雇用の目的、「社会的責任の遂行」が最多
  2. 採用に課題を感じる企業は7割超え、中小企業では「面接官の障がい者雇用や法制度への理解不足」も
  3. 精神・発達障がい者採用、「体調の安定性」を最重視、約6割の企業が回答

 

1.障がい者雇用の目的、「社会的責任の遂行」が最多

 障がい者雇用を行っている採用担当者768名に対して、自社で雇用する従業員において最も多い障がい種別を聞いたところ、「身体障がい(48.8%)」が最も多く、次いで「知的障がい(19.8%)」「精神障がい(15.4%)」と続きました。

 

最も多く雇用している障がい種別(回答数:768人)
障がい種別 割合
身体障がい 48.8%
知的障がい 19.8%
精神障がい 15.4%
発達障がい 4.9%
その他 11.1%

 

主に精神・発達障がい者を採用していると回答した企業に採用手法について聞いたところ、企業規模に関わらず1位は「ハローワーク経由での採用」となり、次いで「障がい者専門の人材紹介サービス」「自社採用」が続きます。

 

精神・発達障がい者の採用手法(企業規模別)
(複数回答、回答数:中小企業100人、大企業56人)
採用手法 中小企業(%) 大企業(%)
ハローワーク経由での採用 62.1% 71.7%
人材紹介(障がい者専門エージェント)経由での採用 41.7% 50.0%
自社採用 29.1% 41.7%
農園型採用 7.8% 13.3%
サテライトオフィス型採用 5.8% 11.7%
特例子会社での採用 1.0% 18.3%
その他 5.8% 0%

 

精神・発達障がい者を雇用する目的は、「企業としての社会的責任を果たすため(47.4%)」や「法定雇用率達成のため(38.5%)」、「多様な人材が活躍できる社会の実現のため(30.8%)」が上位を占めました。

 

精神・発達障がい者を雇用する目的(3つまで)
(回答数:156人)
目的 割合(%)
企業としての社会的責任を果たすため 47.4%
法定雇用率の達成のため 38.5%
多様な人材が活躍できる社会の実現のため 30.8%
既存社員の成長を促進するため 17.3%
SDGs(持続可能な開発目標)の達成のため 17.3%
新しい発想やイノベーションを創出するため 16.0%
既存社員の業務負担軽減のため 11.5%
企業イメージの向上のため 8.3%
社内の人手不足の解消のため 7.7%

 

企業規模別では、「法定雇用率の達成(中小企業40.3%、大企業50.0%)」、「社会的責任の遂行(中小企業37.3%、大企業51.7%)」、そして「多様な人材が活躍できる社会の実現の(中小企業25.4%、大企業36.7%)」といった項目において、大企業は中小企業よりも約10ポイント高い傾向が見られました。

 

これにより、大企業はコンプライアンス遵守や企業イメージの向上といった社外的な視点を重視していることが見受けられます。

 

一方で中小企業では、「既存社員の成長促進(中小企業16.4%、大企業13.3%)」や「イノベーションの創出(中小企業16.4%、大企業10.0%)」などが挙げられました。

 

中小企業では障がい者雇用に対し、自社内へのポジティブな変化や成長への期待が強い傾向が見て取れます。

 

精神・発達障がい者を雇用する目的(3つまで)
(複数回答、回答数:中小企業100人、大企業56人)
目的 中小企業(%) 大企業(%)
法定雇用率の達成のため 40.3% 50.0%
企業としての社会的責任を果たすため 37.3% 51.7%
多様な人材が活躍できる社会の実現のため 25.4% 36.7%
SDGs(持続可能な開発目標)の達成のため 22.4% 20.0%
既存社員の成長を促進するため 16.4% 13.3%
新しい発想やイノベーションを創出するため 16.4% 10.0%
既存社員の業務負担軽減のため 13.4% 13.3%
企業イメージの向上のため 10.4% 10.0%
社内の人手不足の解消のため 6.0% 6.7%

 

2.採用に課題を感じる企業は7割超え、中小企業では「面接官の障がい者雇用や法制度への理解不足」も

 「精神・発達障がい者の採用活動に課題を感じるか」の質問に対し、「非常に感じている(28.8%)」と「どちらかというと感じている(43.6%)」を合わせた回答は72.4%にのぼり、採用担当者の7割以上が課題を感じていることがわかりました。

 

精神・発達障がい者の採用活動に課題を感じるか
(回答数:156人)
回答 割合(%)
非常に感じている 28.8%
どちらかというと感じている 43.6%
どちらでもない 19.9%
どちらかというと感じていない 6.4%
全く感じていない 1.3%

 

採用する上での課題は、「任せる業務の切り出し(63.8%)」が最多で、次いで「応募者の能力・適性の見極め(44.9%)」「配属先社員の知識不足(36.2%)」と続きます。

 

精神・発達障がい者を雇用する上での課題(3つまで)
(回答数:156人)
課題 割合(%)
任せる業務の切り出し 63.8%
応募者の能力・適性の見極め 44.9%
配属先社員の知識不足 36.2%
面接官の障がいに対する知識(理解)不足 25.2%
応募者の母集団形成 15.0%
障がい者雇用に関する法制度の理解 11.0%
障がい特性に配慮した選考方法の実施
(リモート面接の導入など)
11.0%
採用基準の設定 8.7%
関係機関との連携 5.5%
その他 1.6%

 

企業規模別で分析すると、中小企業では「面接官の障がいに対する知識(理解)不足(中小企業26.8%、大企業15.7%)」や「障がい者雇用に関する法制度の理解(中小企業15%、大企業7.8%)」が相対的に高く、採用の前提となる知識面理解面に課題を感じている傾向が見られました。

 

一方、大企業では「応募者の能力・適性の見極め」(47.1%)や「配属先社員の知識不足」(41.2%)といった、採用の実務や入社後の受け入れ体制に関する課題が中小企業よりも高くなっています(中小企業:42.2%、34.8%)。

 

この結果から、中小企業では採用に向けた土台づくりが、大企業では業務の切り出しや職場環境の整備といった、より実践的な対応が求められていることがうかがえます。

 

精神・発達障がい者を雇用するにあたって課題だと感じること【企業規模別】(3つまで)
(複数回答、回答数:中小企業100人、大企業56人)
課題 中小企業(%) 大企業(%)
任せる業務の切り出し 63.2% 66.7%
応募者の能力・適性の見極め 42.2% 47.1%
配属先社員の知識不足 34.8% 41.2%
面接官の障がいに対する知識(理解)不足 26.8% 15.7%
障がい者雇用に関する法制度の理解 15.0% 7.8%
応募者の母集団形成 12.6% 13.7%
障がい特性に配慮した選考方法の実施
(リモート面接の導入など)
11.0% 9.8%
関係機関との連携 8.4% 2.0%
採用基準の設定 8.1% 9.8%
その他 0% 3.9%

 

3.精神・発達障がい者採用、「体調の安定性」を最重視、約6割の企業が回答

 精神・発達障がい者を採用する際に重視するポイントでは、「体調が安定しているかどうか(57.1%)」が最も多く、次いで「コミュニケーション能力(41.0%)」「自身の障がい特性とその対処法への理解度(39.1%)」と続きました。

 

他の障がい種別と比較して、精神・発達障がいは、外見からの配慮の必要性を判断しづらい場合が多くあります。そのため企業は、これまでの経験やスキルだけでなく、応募者自身の体調や対人関係における対応力といった側面も慎重に見極めようとする傾向がうかがえます。

 

精神・発達障がい者を採用する際に重視する点(3つまで)
(回答数:156人)
重視する点 割合(%)
体調が安定しているかどうか 57.1%
コミュニケーション能力 41.0%
自身の障がい特性と対処法への理解度 39.1%
業務遂行に必要なスキル・知識 32.7%
勤務可能日数や勤務可能時間 19.2%
チームワーク 14.7%
仕事への熱意 13.5%
過去の就業経験の有無 10.9%
企業理念や文化との適合性 1.9%

 

企業規模別によって採用時に重視されるポイントに差があることが明らかとなりました。中小企業では「業務遂行に必要なスキル・知識(中小企業:38.0%、大企業:30.0%)」や「勤務可能日数や勤務可能時間(中小企業:20.3%、大企業16.7%)」が比較的重視される一方、大企業では「自身の障がい特性とその対処法への理解度(中小企業32.7%、大企業46.7%)」や「コミュニケーション能力(中小企業:36.6%、大企業:48.8%)」が相対的に重要視されていることがわかりました。

 

中小企業では即戦力としての実務力や勤務条件への適応が、大企業では自己理解や周囲との関係構築力といったソフトスキルをより重視すると考えられます。

 

精神・発達障がい者を採用する際に重視する点【企業規模別】(3つまで)
(複数回答、回答数:中小企業100人、大企業56人)
重視する点 中小企業(%) 大企業(%)
体調が安定しているかどうか 57.3% 56.7%
業務遂行に必要なスキル・知識 38.0% 30.0%
コミュニケーション能力 36.6% 48.3%
自身の障がい特性と対処法への理解度 32.7% 46.7%
勤務可能日数や勤務可能時間 20.3% 16.7%
仕事への熱意 17.2% 8.3%
チームワーク 13.7% 15.0%
過去の就業経験の有無 11.6% 8.3%
企業理念や文化との適合性 2.9% 0%