2025/06/16投稿者:スタッフ

《調査報告》障がい者の就労・活躍の鍵は「在宅就労・ITワーク」。利用者の70%がQOL向上を実感

「IT×福祉」をテーマに障がい福祉サービス事業をおこなうサンクスラボ株式会社(本社:沖縄県那覇市、代表取締役:村上 タクオ)は、就労継続支援A型事業所の利用者を対象に、サービス活用状況と意識に関する調査を実施した結果を報告します。

 

【調査背景】

就労継続支援サービスを利用する障がい当事者がどのような背景を持ち、どのような就労・活躍の機会を得ているのか。そこにはどのような課題があるのか。

 

これはサンクスラボのような就労支援事業者だけに限らず、障がい者雇用・障がい者の就労・生活の質(QOL)向上を目指す全ての企業にとって真剣に向き合うべきテーマととらえ、今後の障がい福祉・就労支援の参考としていただくため本調査を実施・公表しました。

 

【調査結果サマリ】

(1)就労意欲と経済的ニーズの両立

利用動機として「働きたい」という内発的動機である意欲と「収入確保」という外発的動機である経済的理由がともに高く、就労継続支援サービスはこの両面を満たす役割を果たしています。

特に「働き方への配慮」を重視する声が目立つため、障がい特性や体調に応じた個別支援が就労継続には不可欠ということがわかりました。

 

(2)在宅就労の潜在的需要

認知度は低いものの、利用者の半数以上が在宅での就労を希望・実践している点は注目に値します。

今後、就労支援サービス提供者・企業は在宅就労の情報発信と環境整備(ICT支援や就労ツールの導入など)を強化し、さらに多様な働き方を支えていく必要があると考えられます。

 

(3)QOL向上の多面的効果

自身の体調や希望に合った業務を「適切」と感じる人が増え、スキル向上を実感するとともに、日々の生活リズムの確立や精神的安定につながっており、約7割がQOLの向上を実感しています。これはサービスの大きな強みだと考えられます。

加えて、家族関係や趣味活動といった“生活全体”への良い波及効果が確認されており、就労継続支援サービスが福祉・健康面にも幅広く寄与しているといえます。

 

【構成内容】

1 サービス利用者の基本属性

1-1:ジェンダーおよび年代比

2 サービス利用者の生活状況

2-1:サービス利用者の特性

2-2:サービス利用者の生活状況

2-3:サービス利用者の生活周辺環境

3 就労継続支援(A型)サービス利用状況

3-1:サービス利用動機と在宅就労の認知状況

3-2:サービス利用者の就労体制と就労外収入

4 サービス利用が及ぼした影響と変化

4-1:サービスが利用者に及ぼした影響と変化

5 サービス利用終了後の就業状況(輩出状況)

5-1:輩出状況

 

1 - 1 ジェンダーおよび年代比

 

性別
性別 割合(%)
男性 49%
女性 50%
その他 1%

 

年代
年代 割合(%)
20代 30%
30代 27%
40代 16%
50代 4%
60代 22%

 

サンクスラボ(就労継続支援A型事業所)の利用者は、男女ともほぼ同数となりジェンダーによる偏りは見られませんでした。年代構成では、最多は30代・40代、次いで20代と20〜40代が全体の約8割を占め働き盛りの世代が利用の中心であることが伺えます。

 

2 - 1 サービス利用者の特性

 

診断名(複数回答)
診断名 割合(%)
ADHD 8%
ASD・自閉症 12%
うつ病 19%
双極性障害 10%
統合失調症 13%
知的障害 4%
PTSD 1%
パニック障害 2%
強迫性障害 1%
広汎性発達障害 2%
てんかん 2%
肢体不自由 8%
高次脳機能障害 2%
適応障害 2%
不安障害 6%
摂食障害 1%
解離性障害 1%
難病 0%
その他 3%
内部障害 2%

 

所持手帳の種類
手帳の種類 割合(%)
「身体障害者手帳」のみ所持 15%
「精神障害者保健福祉手帳」のみ所持 69%
「精神障害者保健福祉手帳」と「身体障害者手帳」を所持 2%
「療育手帳」と「身体障害者手帳」を所持 1%
「療育手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」を所持 2%
「療育手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」のみ所持 0%
「療育手帳」のみ所持 4%
持っていない 6%

 

利用者における診断名は「うつ・鬱」が全体の約2割を占め、次いで「統合失調症」「ASD・自閉症」となり、これらが全体の約半数を占めていることがわかります。

全体の7割が精神障害者手帳を所持しており、そのおおよそが精神障害者手帳のみの所持ということがわかりました。

 

3 - 1 サービス利用動機と在宅就労の認知状況

 

利用動機
動機 割合(%)
お金が必要なため 25%
働きたいと思ったため 29%
以前いた会社(福祉サービス含む)を退職したため 23%
移動圏内で就労できる事業所がないため 7%
医師等専門家に勧められたため 6%
体調・配慮のある働き方をしたほうがよいと思ったため 7%
その他 2%

 

在宅就労の認知状況
認知状況 割合(%)
知っていた 21%
知っていたが興味がなかった 9%
知らなかった 44%
知らなかったが在宅就労ができると良いとは思っていた 26%

 

サービス利用

の理由で最多は「働きたいと思ったため」次いで「お金が必要なため」となり、経済的理由や自らの意欲が就労動機となっていることがわかります。また、働き方に対する配慮を重要視する理由が多いことも伺えます。

在宅就労に関する認知度を見ると「知らなかった」が約半数を占め、次いで「知らなかったが在宅就労ができるとよいと思っていた」という結果となり、在宅就労の認知・浸透が不充分であることがわかります。

 

4 - 1 サービスが利用者に及ぼした影響と変化

 

サービス利用後の変化
変化 割合(%)
一般就労への意欲が高まったこと 10%
業務内容が自分にあっていること 16%
在宅就労ができたこと 7%
時短勤務(介護、育児等をしながら)で働くことができたこと 4%
他の事業所では合わなかったが働くことができたこと 5%
体調に合わせた働き方ができたこと 15%
体力がついたこと 4%
特性の理解が深まったこと 5%
コミュニケーションスキルがあがったこと 3%
PCスキルがあがったこと 10%
その他 21%

 

サービス後のQOL変化
変化 割合(%)
向上した 70%
向上していない 25%
わからない 5%

 

特にQOLが向上したもの
向上した点 割合(%)
生活リズム(就寝起床、外出時間等)が安定した 17%
収入が増えた 15%
精神面が安定した 14%
目標がもてるようになった 10%
生きる活力が高まった・合否自己肯定感 9%
自己理解が深まった(特性の理解、特性に対しての対処等) 7%
体調が安定した 5%
健康に気を遣うようになった 5%
所属する場所が増えたこと 4%
趣味や娯楽が楽しめるようになった 3%
他律的な役割に関わらず自分で選んだ働き方 3%
家族以外との会う機会が増えたこと 2%
家族・同僚などとの関係が良好になったこと 2%

 

サービス利用後の変化では「業務内容が自分にあっていること」「体調に合わせた働き方ができたこと」といった回答から、業務内容や働き方が合っていると感じている方が多いことがわかります。また、スキル向上を実感しているという結果も一定数あり、サービスが好ましい影響を及ぼしているといえるでしょう。

サービス利用者の7割が「QOLが向上した」と回答。具体的には日常のリズムづくり、収入増、精神面の安定といった理由が大半を占める結果となりました。また、家族との関係の改善や趣味の充実といった回答からわかるように、サービスが多方面に良い影響を与えていると考えられます。

 

※サンクスラボ調べ